- THE JOURNAL

May 18th, 2019

New Mexico〜Arizona〜California 2

ホテルの朝食はワッフルを焼いて蜂蜜をたっぷりかけた。卵とベーコン、そしてポテトの定番料理にフルーツ。食べつけない食事は海外では寛大な気持ちにさせられる。朝食はお米を食べる習慣があるから、甘い主食は正直苦手。一歩家を出ると自由になる面と不自由になる面がある。これも日常から離れることで感じるコト。これを感じに来ている側面もある旅だ。

昨日は空港からホテルまでの66.3マイルを走った。1マイル(mi)は1.61キロメートル(km)なので約106km運転したことになる。この旅の運転手は自分一人なのだがゴールのL.Aまでどのくらい走ることになるのだろう。今日は一番距離を走る予定になっている日だ。ホテルのチェックアウトを済ませでかけよう。今日の最終目的地はセドナだ。

これから運転するにあたって水を買っておきたかった。海外に来ると必ずやる事として「スーパーマーケットに行く」ということをしている。それは初めての海外出張の時、今から30年以上前になるが、スーパーマーケットに行って感動したから。今でこそ当たり前のことが、全て新鮮に映った事が忘れられない。24時間営業のでっかい店に店員がほんの数名。訪れた時間が確か22時過ぎていてお客も疎ら。そこで買ったオレンジが安くて美味しかったこと。当時日米間で、牛肉とオレンジの輸入自由化の前だったので、日本ではそれを境に値段が全く違った。当時オレンジは高級品で、オレンジジュースは三分の一くらいになったのではなかったか。

Albertsonsは大手スーパーマーケット。500mlの水が45cだった。

物量が半端ないです。

アメリカっぽいと思うケーキ。私は腐らないお菓子と呼んでいます。

 

サンタフェから西へ進む前に行きたいところがあった。北へ30miほど84号線を上るとチマヨという村がある。そこは17世紀の終わり頃、現在のメキシコから開拓者が住み始めた所で、はた織りで着るものや敷物などを作っていた。その文化が今も続いている。二十数年前にこの地を訪れた時、散々悩んでブランケットを買った記憶がある。そこが今どうなっているのかという気持ちがチマヨに向かわせた。

ナビを頼りに走るのだが建造物も見当たらない。道は綺麗に舗装されているがそれだけだ。気候の関係か、山は土色で、木々はたまに生えている。本当にこんな所にあるのかと疑ってしまうくらい何もない道を進む。そこはまさにジョージア・オキーフの絵のようだ。そういえばサンタフェと言えばオキーフなのだが、この時ジョージア・オキーフミュージアムが長期閉館になっていたのは非常に残念な事だった。サンタフェの魅力も半減してしまった。チマヨにつき二軒のお店を見た。店は綺麗になっていたが、何か食指が動かない。モチーフが今の気分をセーブさせているようだ。しかし、昔からある伝統工芸を今に繋げていることには素晴らしいことだと思った。手織りの質感や、背景にあるストーリーは、変わらず興味深い味わいを導き出す。機械ではできない、時間をかけて出来上がったモノはリスペクトに値するし、普遍的な良さも感じる。ファッションを生業にして思うことだが、その「良さ」が邪魔するのもファッションであると。

Ortega。以前は迷いに迷ってブランケットを買った。大きいサイズで持って帰るのに一苦労。

Centinela。未だに手織りで作る織物は味がある。

奇跡の砂の教会。EL Santuario de Chimayoは奇跡の砂で有名な教会。後ろに見える山々を越えてやってきた。

 

これから向かう町はギャラップ。お昼ご飯も食べたい。あらかじめあたりを付けていた店がいくつかあったのだが・・・。実はチマヨを出る時には予定時刻を超えていた。移動時間が読めないという理由が一番大きいのだが、途中の町グランツ辺りで何か食べようと大枠は考えていた。これが大きな間違いの始まりだった。

グランツに着いた時はとうにお昼を周っていた。この町にもルート66の下、カフェを営業していることは知っていた。(そういうお店は長い道の中結構ある)その一つがグランツカフェ。

ルート66はその昔物流や文化を運んだ道でアメリカにおいて大切な道路だった。しかし時代が進み、道は整理され車の性能も上がり、運送時間の短縮も図られた。州間高速道路に変わられたルート66は、それ自体に期待されることはなくなっていった。豊かを望まない人はいない。その陰に失うものの大きさを理解するには多少の時間が必要だ。

ようやく着いたカフェは閉店していた。営業時間の話じゃない。店そのものが無くなっていた。この旅で州間高速を使ったり、俗に言う下道のルート66を使って移動している。地図上、町の名が付いているところを時折通過するのだが、何人住んでいるだろうと思う町をいくつも見てきた。日本の26倍の面積に3倍の人口、数字上からは納得できるのだが。しかし問題は有名なカフェが閉店してしまった事、いやお昼ご飯を食べれない事だ!周りを見渡すと何も無い。本当に何も無い。インターチェンジを降りた所にマクドナルドを右目に見ていたことを思い出し、マックの提案をしたが、日本でこの環境だとマクドナルドも無いだろう。

サインはこの道が一番栄えた頃のデザインが多い。素敵なものが多いと思う。

 

ギャラップはグランツより大きな町だった。大きいといってもしれているけど。その昔、映画産業が盛んな頃にはスターが泊まる有名なホテルがあり、ルート66を通るなら付いて回る観光地のようになっている。キャサリン・ヘプバーン、カーク・ダグラス、グレゴリー・ペック、ハンフリー・ボガート等、誰もが知っている往年のスター達が宿泊している。日本の時代劇に当たる西部劇が、盛んに撮られた時代の話だと思う。

CHARM OF YESTERDAY…CONVENIENCE OF TOMORROW日本のホテルにこんなこと書かない。

さすが史跡と言うだけの雰囲気。

 

もう一つのギャラップでの目的はトレーディングポストに行くこと。ここには以前にも立ち寄ったことがあるが、その時の記憶を辿りながら店を探した。トレーディングポストとは交易所の事で、お金の価値がまだ定まらない時代、白人とインディアンである先住民が物々交換をする所である。元々この町にはインディアンの血筋の人々が30パーセント位暮らしていると聞く。インディアンの文化から生まれたモノがお金に変わり、白人の文化のモノがインディアンの生活に入る。それは食料に、インディアンジュエリー、ラグ、工芸品に至るまで多岐にわたる。また質屋の要素も兼ね備えていた。こうして白人とインディアンの共存が始まっていったのだろう。そんなお店の一つにRICHARDSON’Sがある。歴史のある店で、

1800年代のラグもあった。代々伝わってきたものだと思う。図柄は素晴らしかった。買い物を済ませ会計をしていた頃、他の店員はシャッターの鍵をジャラジャラ鳴らしながら帰れと言わんばかりの態度。店を出た瞬間に鍵をかけられた。その後、この旅における田舎の店はほぼ17時に閉まることを知った。店内は歴史を見ているかの様。

質種なのか馬の鞍も売っている。

RICHARDSON’S 。物々交換、質屋と役割が広い。

 

今日のホテル、最終目的地はセドナと書いた。暇な人はちょっと地図を見て欲しい。距離感がわからないかもしれないが、セドナなのだ。少しずつ時間に遅れはしたが、果たしてホテルにたどり着けるのか。今いるところはニューメキシコ州、セドナはアリゾナ州、ドライバーは一人・・・過酷な状況だがまだ予定を入れてあった。ウィグワムモーテルを見る事。このモーテルは、ピクサー映画カーズに登場する町ラジエタースプリングスにあるサリーのモーテルのモデルになっている。それがウィグワムモーテル。これはセドナに行く途中にあるから軽い気持ちで考えていた。この時間になるともういいかなという気持ちがどんどん大きくなっていた。どうしようか。行かない気持ちの方が大きくなるのを、もう来ることはないだろうと言い聞かせ無理をした。

WIGWAM MOTELはホルブルックにある。

それらしい車をディスプレイしている。

 

さすがに時間も遅くなり、体力も限界に近づきつつある。どの店も閉店時間が早いことを考慮してホテルへ向かうことにした。本当なら次の町、ウィンズローでジャックラビットのTシャツや、イーグルスのTake it Easyの街角にも立ちたかったのに。名物のオブジェ、ツインアロウも120kmの速度で消えていった。そう言えばこの道を走っている時に不思議な体験をした。東から西へ向かって走っていたところ、太陽がいつまでも沈まないのだ。まっすぐな道をいつまでも太陽を追いかけてマツダは走り続けた。フラッグスタッフを南下した頃には太陽は急に暗黒の闇に包まれ出した。日本の様に街灯は無い。車のライトだけが頼りになっていた。この頃になると本当に体力も限界だ。見えるものが少なくなると急激に疲れが増すことをこの時初めて意識した。太い複数車線の道も、いつからか単線になりくねくねと曲がりだす。高地に向かっているのはアクセルの感覚でわかるが目では感知できない。眠気とも必死に戦い、セドナの明かりが見えた時にはただ横になりたいと思うだけだった。ホテルにチェックインした時には24時の手前だった。明るく対応してくれたフロントの人に、これから食べられるレストランは有るか尋ねたところ、バーガーキングの他に二軒あると教わった。オススメを聞いたがどちらも同じと、期待できない返答。運転手の自分はもう食べる気力はなくなっていた。

サラダだけ頂いた。感想はなしです。

 

ホテルに帰りシャワーもせずすぐに寝た。この日の移動距離は481mlで770kmに及ぶ。何となくわかっていた事だけど無茶な予定だった。人生で一番運転距離、運転時間の長い一日だった。もうこんな事は無いし、しない。というより無理です。

いい部屋です。観光地だからか落ち着けるムード。

 

New Mexico〜Arizona〜Californiaは次回につづきます。