- EDITOR’S PICS

December 19th, 2016

重ねていくデザイン 2

前回からの続きとなります。

 新潟という都市に、唐突なデザインを差し込むのはふさわしくない。 空間をすべて塗り替えてしまわずに、歴史のある場所に余白を残しつつ、新しい色を重ねていく。 そしてまたその後に誰かが新しい色を少しずつ重ねていく。そうすることで、店舗であっても、都市の空間や風景として、人々の記憶に残っていくものだろう。

この言葉は、バイケリーの内装デザインを手がけたインテリアデザイナー、黒川勉氏のコメント。彼は店のオープンからちょうど1年後、43歳の若さで亡くなりました。 この事実があったうえで冒頭の言葉を改めて聞くと、言葉のひとつひとつに非常に重みを感じます。デザインを、「ミックス」するのではなく、「重ねていく」という考え方に、彼の歴史に対するリスペクトや、未来への展望が透けてみえるような気がして。

店がオープンしてからたくさんの才能あるクリエイターと仕事をする機会に恵まれましたが、振り返ってみれば、バイケリーが出合ったいちばん最初の「超一流」が黒川勉氏でした。

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いざ仕事が始まってみると黒川氏は、私たちがやろうとしていること、またやりたくないことを完全に理解していて、そして彼にしかできないやりかたで、スペースをダイナミックに表現していくのは圧巻でした。既成のデザインはこのスペースに相応しくない、とベンチやソファも特別にデザインされ、高級なデザインファニチャーを店に据えるのが当時のトレンドでしたが、彼は飽くまでもオリジナルの製作にこだわりました。そんなふうにして出来上がった私たちのバイケリーは、「時を超えて受け継がれていくもの」のコンセプトそのままに、世界中のどこにもない、ましてや何風でもない、とても美しいものだったし、商品としての洋服やシューズが入ってみると、その思いは確実なものになりました。

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今でも海外出張のたびに、デザイナー、クリエイター__古いものを良しとする欧米人は、店舗の写真を見ると、 ありったけの言葉で感動を示してくれます。建築好きな男性デザイナーなどは特にそうで、門戸を開かないことで有名なラグジュアリーブランドも、店舗のデザインから私たちの考えを感じ取って取引に応じてくれることもありました。

建築デザイン業界での黒川氏の業績とか偉大さを、正直いって私たちは今も理解しきれていないと思います。彼の急逝後、建築デザインを学ぶ若いひとや業界関係者が何人も訪ねて来て、彼の仕事を賞賛するたびにそう思わされました。 でも、だからこそこんな私たちとの仕事を無心に楽しんでくださったのではないか、と今では思います。その骨太な作風同様、真面目で誠実、そしてシャイなお人柄でした。

黒川氏があえて残した「余白」に色を重ねて、もうずいぶん経ちます。その重ねた厚みのなかには、何十年も昔、新しい文化を新潟に持ち込もうと海を渡ったK氏の思い出や、新しい美意識を新潟の女性に根付かせたいという私たちの思いがあります。