- EDITOR’S PICS

November 21st, 2016

重ねていくデザイン 1

先日思うことがあって「建築としての」BYKELLYについて改めて考えてみました。以下の文は以前どこかに書いたものですが、加筆修正して再度お届けいたします。 いまBYKELLYは外壁の蔦が色づいて、とても美しい季節。みなさま、ぜひいらしてご覧になってみてください。

 

今回はBYKELLYの誕生にあたり重要な位置を占める店舗建築について、二回に分けてお話ししてみたいと思います。BYKELLYが入居しているビルは 築40年は経とうかという、新潟市内でも有数の古い建物。そのモダンな外観や、イタリア帰りのビルの持ち主が経営するレストランの本格的なイタリア料理が当時はまだまだ珍しく、それに惹かれた知己が集まり、サロンのように文化の生まれる場でもあった、と聞いたことがある。

時が経ってレストラン経営から手をひいても、オーナーはその空間を他者に貸したり譲ったりすることはなく、長い間鍵をおろしたままだった。レストランやヘアサロン、ジャズのレコードショップなど、あらゆる店から数多い引き合いがあったにもかかわらず。後にオーナーご本人に伺ったが、その空間に対する思いの深さは相当なものだった。

様々な経緯があって、無事BYKELLYがオープンしてから数日後、ひょっこりとそのオーナー、K氏が、「お店を見せて欲しい」と現れた。店内をゆっくりと一巡したあと、地下のかつてはワインカーヴのあった空間にひとり、長い間佇んでいた姿は今も目に焼き付いている。

工事中、一度も現場に来なかったのは・・・怖かったから。変わっていってしまうのを見るのが、怖かった。

そう言って氏が足早に店を立ち去ったあと、なんともいえない気持ちになった。今までに見たこともないような素晴らしいお店が出来上がったけれど、Kさんの心中を思うと、浮かれてばかりもいられないような気がして。

数日後、そのK氏より包みが届いた。なかにはK氏自身が撮影した写真のパネルが一枚。添えられた手紙に、彼の愛した南イタリアの日常のひとコマだと記されていた。二人の太ったマンマが自分たちにはとても入りそうもない、ショウウィンドウのウェディングドレスに見入っている姿がユーモラスで、ともに写り込んでいる咲き乱れるブーゲンビリアとか、ライムストーンの車止めが、いかにも“ヨーロッパの南”を感じさせて美しかった。数多く撮影したであろう味わい深いシーンのなかから、「洋服屋」である私どもへ、このテーマを選んで贈ってくれたこと。添えられた「お店の片隅にでも飾ってください」 という言葉。これでよかったのだ、こういうかたちで認めてくださったのだ、と胸が熱くなった。

同時にK氏が重ねてきた歴史の重みに、改めて身の引き締まる思いだった。たくさんのひとたちの思いがこめられて 生まれたBYKELLY。次回は、そんな歴史ある空間を見事に再生させた建築家、黒川勉氏についてお話しさせていただこうと思う。