- EDITOR’S PICS

May 30th, 2016

IN THE BAGGAGE

「何着ようかな」、まず朝起きて考えること。洋服屋の私にとって、毎日のスタイリングを考える時間がとても大切な時間。儀式のようなもの。あれこれクローゼットから引っ張り出して着たり脱いだりすることは全くなく、頭の中でスタイリングを想像して自分が想像していたものになるかならないかを毎日試す。シャワーをしながら、メイクをしながら、出かける間際まで今日1日を気分良く過ごす為のスタイリングを頭の中で考える。飽きてきた昔の洋服を使って、いかに新鮮なプレゼンを自分にするかが特に面白くて、想像以上の時はちょっと嬉しい。頭の中にスタイリングの絵を描くように、毎朝私の頭の中でワードローブが交錯しています。

洋服って、表面を取り繕うものなのでナルシスティックで軽薄にも考えられがちなものですが、それだけで気分を変えてしまうすごい威力のもの。そして立場や意識などの表れとしても洋服という存在には影響力があります。洋服は生活の中での必需品ではありますが、「表現するもの」というポジションなった今、その存在理由はゆとりや潤い。出掛けた時にまず会話になるのは今日のメンバーそれぞれのスタイリングですし、それが素敵か否かはその場の空気をも左右します。有形物なのだけれど、無形のゾーンに入った事がここ数年で大きく洋服の立ち位置が変わったことだなと思います。

今年の1月出張先のミラノの街を歩いていると、急に見知らぬ女性から声をかけられて「その黄色いスカート素敵ですね」と話しかけられました。街を歩いている人を見回してみると、黒い洋服を着ている方が多いので色が目立っていたのかも。褒められて嬉しいというよりは、異国で知らない方との接点があったことが思い出になったし印象に残り、人と人を繋ぐパイプとなる洋服はやはり面白いし素晴らしいものだなと実感しました。そして人見知りの私には、洋服が会話のきっかけとなる事がたくさんあります。お洒落をしているということは自己満足だけではなく、人と出会い、人の心も動かし豊かな気持ちにさせるのだなと思います。

毎日の私の気分、周りの人々の気分やムード、知らない人との接点。洋服は生活の中で様々な役割を持って存在しています。心に触れてくる洋服って、改めて素晴らしいなと思っています。