- EDITOR’S PICS

December 2nd, 2015

IN THE BAGGAGE

今、一つの映画が話題となっています。THE TRUE COST 。5月のニューヨーク公開を皮切りに世界中で公開が決定し、この11月ようやく日本でも公開となりました。ファストファッションを中心とした大量生産・消費主義が生み出す途上国の過酷な労働や被害をフォーカスし、その反対側で行われている過度に物欲を煽る広告などで服を安価で叩き売る利益至上主義世界とのギャップや批判を描いた映画です。そのファッション業界の闇を浮き彫りにしたドキュメンタリー映画は、ファッション業界だけでなく世界中から注目され話題となっています。

KELLYでご紹介しているデザイナーStella McCartney(ステラ・マッカートニー)も出演し、「私にとってチャレンジしがいのあることは、この業界を見直して地球に害を及ぼさないことを見つけ出すこと」、そう彼女はインタビューに答えています。実際、私はファッション業界の消費活動の場にいるので、この映画のことをここで話すのは微妙な立場なのですが、この映画は「買い物の仕方」の変化の兆しなのではないかと思っています。洋服は必要です。でも、ただ闇雲に買うのではなくて、本当に着たいもの、本当に必要なものを買うという、「買う」行為のクオリティを上げていくことを考えるきっかけを与えられているのではないかと思います。

先日「簡単に考えなくて買えるしデザインもそれなりだから買ってしまうんですよねファストファッション」と言っていたお客様に、「私にはこのKELLYの服は高いものだけれど本当に気に入ったものを買って大切にします」と言って頂きました。買って頂いたことそれ自体が嬉しかったのですが、買い方やモノへの価値観、ワードローブの揃え方の変化のきっかけになったことがとても嬉しく感じました。私はKELLYに移動してきてから15年くらいになりますが、KELLYの洋服はほとんど捨てていません。自分がバイヤーになる前の洋服もです。KELLYのスタッフは、高い洋服を毎シーズンじゃんじゃん買って翌シーズンは着ないのでは?、と思われている方もたくさんいるかと思います。実際、大変ねー翌シーズン着ないものね、とよくお客様に言われます。私の今日のスタイリングは、STELLAのニットは今年のものだけれど、10年前のウールのプリーツスカートに、15年前のレザーのコート。コートは、全く今まで気分じゃなくて何年も着なかったのに、その気分じゃなかったオーバーサイズとローブのようなデザインが今はお気に入りのツボ。KELLYは「洋服の基本」といつも向き合っているので、時代が巡るといつかまた着たくなる洋服ばかり。一生捨てられないものばかりなのです。15年かけてワードローブが全てKELLYの洋服になった今、スタイリングの可能性が広がって、今また毎日のコーディネイトを考えることが楽しくなっています。

それと、よく勘違いされるのはバイイングの仕方です。KELLYでご紹介しているもの全てが、半年前に私たちがオーダーした数だけ作られてデリバリーされたものです。生産される商品は基本的には、オーダーした数だけ。大量に作られた商品として出来上がっているものを選んで買ってくるのではなく、オーダーしているのです。昔ながらといえば昔ながら、でも気に入ったものを私たちの店の分だけ、それは今の時代の流れに合っている買い方だと思っています。

私たちが考えなければいけないのは、これからのファッション業界のあり方。そしてそれをどのように自店に落としこむか。ただ今思うのは、KELLY A.SMITH BYKELLYの考え方は、それを創業時から自然に行っていてこれからの近未来にフィットした経済活動をすでに展開しているのではないかという事。見つめ直されている「消費」。「楽しい買い物」のクオリティや投資価値についてこれからも考えていきたいと思います。