Letter from BYKELLY
letter from BYKELLY
2009-10-12 16:26
皆さま、こんにちは。
Parisから戻ってまいりました。
たくさん仕事をしてまいりましたが、その成果・トレンド・トピックスなどは、
これから折りをみて少しずつお話しさせていただきます。
今回は、今Parisで話題のショップ「Merci」をご紹介してみようと思います。

パリ・マレ地区。Merciのオーナー夫妻は、美しい子供服で有名なボンポワンの創設者。
四年前、サンジェルマン・デ・プレの素晴らしいフラッグシップショップの
オープンを最後に大きくなったブランドの権利を売り、
「これからの人生をコンフォタブルに送るためのものは
もうすべて持っているから、今度は幸せを感じることができないひとのために、
自分たちができることをやりたい」
とスタートしたのが、このメルシーなのです。
イヴ・サンローランやアクネ、イザベル・マラン、ステラ・マッカートニーほか、
多くの有名メゾンが溢れるセレクトショップ・・・というと、
当たり前過ぎてお話にもなりませんが、このお店の大きなコンセプト、
それは「チャリティである」ということなのです。

利益のほとんどすべてがマダガスカルの恵まれない子供や女性に寄付される、
という店のコンセプトに賛同した各メゾンは、
市場のプライスよりもリーズナブルな「メルシー・スペシャルモデル」を、
このお店に特別に提供しています。
チャリティとかエコ、となるとこれまでは大概、
「センスがイマイチ・・・」でしたが、メルシーはちがいます。
たとえば、ラボのような香りのコーナー・・・よく見るとアニック・グタール!


アニック・グタールさんとメルシーのオーナー、マリー・フランス・コーエンさんは、
なんと実の姉妹(それにしてもクリエイティブなご家族です)。
パッケージをシンプルにすることで価格を抑え、
また、ボトルを持参すれば詰め替えもしてくれるということです。
ジュエリーコーナーにはマリーエレーヌ・ドゥ・タイヤックも。

流行のヴィンテージコーナーも、あえてそう謳わず「セカンドハンド」と銘打って、
他の高価なヴィンテージショップとは一線を画しているところが小気味良い。
体育館くらいの大きな大きな敷地の三層のお店には、
カフェやオーガニックのレストラン、お花屋さん、ブックストアも併設されて、
インテリアや文具、キッチン廻りの雑貨も網羅。もちろん子供服もあります。
ぜひなにかショッピングしたかったのですが、キャッシャーの長〜い行列に泣く泣く断念。
不景気の昨今、こんなに長い行列は珍しい。
ちなみにその行列のなかにはデザイナー、コンスェロ・カスティリオーニを見つけました。
もちろん、彼女が手がけるマルニもラインナップのひとつです。
モードから雑貨、すみずみまでチェックして、
期間ごとの展覧会を鑑賞したあと(この時期はドミニク・イセルマンの写真展が)
カフェでひと息、お土産にステイショナリーを物色して、
クリスチャン・トルチュのアレンジを手にしてお店を出るなら、半日は絶対必要。
皆さまはぜひゆっくり過ごして、その空気感を存分に味わってくださいね。

このお店のもうひとつの特徴は、モードのお店らしからぬ「子供客の多さ」。
もちろんボボなパパとママに連れられてのことですが、
彼らの存在が違和感なく、むしろお店のハッピーなムードの演出に一役買っています。
生活感ありありのファミリーストア・・なムードは皆無なのに、
対象は紛れもなく「ファミリー」。
あたまのてっぺんからつま先まで最新のブラック・モードで固めたお父さんが、
中学生でしょうか、娘さんにあれこれとヘッドドレスを試着させている光景。
小さな子供たちが駆け回ってもオーケーな、広々とした、かつアーティスティックな空間。
コレットにもモンテーニュ・マーケットにもあり得ないシーンです。
「ライフスタイルに根ざしたハイ・ファッション」を目の当たりにし、
本当の意味での「コンセプトショップ」の久々の出現に、ちょっと感動してしまいました。
ここを訪れるほとんどのひとが、物質的に満ち足りた生活を送っているはず。
もちろん、わたくしもそうです。
誤解を恐れずに言えば、飢餓や差別、紛争・・・といった悲しみは、
チャリティにはまだまだ関心の薄い私たち日本人にはピンとこないものかもしれません。
けれど単純に、
「パリといえばショッピングでしょう」
「素敵な『パリ時間』を過ごしたい」「パリっぽい、おしゃれなセンスに触れたい」
「おいしいものが食べたい、でもヘルシーでなくっちゃ」etc、という
それぞれのマテリアルな欲求を満足させることが、結果として「誰かの」役にたっている。
こんなに素敵な相互関係ってあるでしょうか。
そうです、ファッションは、すべてのひとを幸せにしてくれるもの。
様々なかたちをかりて、心を癒し、満たしてくれるもの。
ライフスタイルをカラフルに、瑞々しくしてくれるものなのです。
と同時に、あまりにも身近すぎて見失ってしまいがちだけれど、
ファッションは、最も身近な「アート」でもあります。
皆さまがバイケリーで手にする、いちまいいちまいに込められた幸せの可能性。
多くのひととシェアーできたらいいな・・・。
改めてそんな思いを強くした10月のパリでした。