重ねていくデザイン
letter from BYKELLY
2007-11-10 17:40

季節は少し前のことになりますが、バイケリーはこの夏
オープンして3周年を迎えることができました。
今回はバイケリーの誕生にあたり、重要な位置を占める店舗建築について、
二回に分けてお話ししてみたいと思います。
バイケリーが入居しているビルは 築40年は経とうかという、
新潟市内でも有数の古い建物。
そのモダンな外観や、イタリア帰りのビルの持ち主が経営するレストランで供される、
本格的なイタリア料理が当時は まだまだ珍しく、それに惹かれた知己が集まり、
サロンのように文化の生まれる場でもあった、と聞いたことがある。
時が経って、レストラン経営から手をひいても
オーナーはその空間を他者に貸したり譲ったりすることはなく、
長い間鍵をおろしたままだった。
レストランやヘアサロン、ジャズのレコードショップなど、
あらゆる店から数多い引き合いがあったにもかかわらず。
後にオーナーご本人に伺ったが、その空間に対する思いの深さは相当なものだった。
様々な経緯があって、無事バイケリーがオープンしてから数日後、
ひょっこりとそのオーナー、Y氏がお店を見せて欲しいと現れた。
店内をゆっくりと一巡したあと地下の、かつてはワインカーヴのあった空間に、
長い間佇んでいた姿は今も目に焼き付いている。
工事中、一度も現場に来なかったのは・・・怖かったから。
変わっていってしまうのを見るのが、怖かった。
そう言って氏が足早に店を立ち去ったあと、なんともいえない気持ちになった。
今までに見たこともないような素晴らしいお店が出来上がったけれど、
Yさんの心中を思うと、浮かれてばかりもいられないような気がして。
数日後、そのY氏より包みが届いた。
なかにはY氏自身が撮影した写真のパネルが一枚。
添えられた手紙に、彼の愛した南イタリアの、日常のひとコマだと記されていた。
二人の太ったマンマが自分たちにはとても入りそうもない、
ショウウィンドウのウェディングドレスに見入っている姿がユーモラスで、
咲き乱れるブーゲンビリアとか、ライムストーンかなにかを使った車止めが、
いかにも ヨーロッパの南、を感じさせて美しかった。
数多く撮影したであろう 味わい深いシーンのなかから、
「洋服屋」である私どもへ、このテーマを選んで贈ってくれたこと。
添えられた「お店の片隅にでも飾ってください」という言葉。
これでよかったのだ、こういうかたちで認めてくださったのだなあ、と胸が熱くなった。
同時に、Y氏が重ねてきた歴史の重みに、改めて身の引き締まる思いだった。
たくさんのひとたちの思いがこめられて 生まれたバイケリー。
次回は、そんな歴史ある空間を見事に再生させた建築家、黒川勉氏について
お話しさせていただこうと思う。
* たくさんのお客さまの温かいご支持のもと、
バイケリーはオープン3周年を迎えることができました。
心よりお礼を申し上げます。
感謝の気持ちをこめて、イベントを企画しております。
詳細はウェブサイトの「トピックス」に追って掲載してまいりますので、
どうぞご注目くださいませ。